イグノーベル賞「歩きスマホをする人がいると、みんなが歩きにくくなる」
京都工芸繊維大学の村上先生のグループが2021年イグノーベル賞「動力学賞」を受賞されました。
おめでとうございます!!
そこで今日は村上先生の研究を紹介し、最後にこの研究を見て「こんなところに活かせるのでは?」という私の考えを述べたいと思います。
研究内容
では、さっそく今回の研究についてを大雑把に説明します。
人は他の人の行動を「予期」することで自分の行動を決定している、ということがこれまで明らかになっていました。例えば、前の人が左に動くだろうから、衝突を回避するために右に行こう、と考えるようなことなどです。
村上先生が明らかににしたのは、そういった「予期」が集団の行動にも影響を及ぼしているということです。
ちなみに「予期」という言葉はここでは次のように使われています([参考文献1]より)。
予期とは単に未来の事象に備えて待つだけの予測とは異なり、備えつつ行動を実行するような動的な意思決定過程と考えられます
今回の研究で行われた実験は、歩きスマホをする人がいるグループといないグループを歩かせて、人の流れ(レーン)ができるかどうか、その流れが乱されないかどうか、ということを検証しています。
そして実験の結果から、統計的に有意(←まぐれの結果ではないよ、という意味です)に歩きスマホをする人がいるグループの方が
- 人の流れができるのに時間がかかる
- できあがった人の流れを乱す
ということがわかりました。
これは歩きスマホする人は、他の人の行動を予期することが難しくなったからだと、考察されています。
つまり、
↓
歩きスマホをしている人が他の歩行者のことを予期しない(できない)
↓
歩きスマホをしている人がぶつかる直前で急な反応をする
↓
全体の人の流れが乱される
↓
みんなが歩きにくくなる
ということです。
[参考文献1]のプレスリリースでは、この研究結果は人の集団的意思決定や複数のロボットなどの行動にも活かせるとあり、今後の研究の発展に期待したいです。
以上が村上先生たちのグループがイグノーベル賞を受賞された研究についての紹介でした。
この研究を受けて
ここから、この研究を見て個人的に考えたことについてまとめていきます。
考えたことは二つあります。
一つ目は、人と協調するロボットの次の行動を「予期」しやすいようにすることで、人となじめるのではないか、ということです。
例えば、ロボットがこちらを向いていても、それは向いているだけなのか、こちらに来ようとしているのかはわかりにくいと思います。
もしこちらに来ようとするのであれば、ライトをその方向に照らし、向いているだけで、移動しないのならライトは消す、というようなことをすれば、私たちがロボットの行動を予期でき、スムーズに活動できるのではないでしょうか
二つ目は、歩きスマホの人のためのレーンを作るということです。「左側通行」をお願いするのと同じように、「歩きスマホは真ん中へ」というイメージです。
こうすることで、歩きスマホの人が全体に与える影響は少なくなると思います。
禁止することが難しい(やめましょう、呼びかけてもなくならない)ので、逆にOKにしてしまい、影響を最小限にしようという考え方です。大麻の合法化と少し似ているかもしれません。
最後に
今年もイグノーベル賞を日本の方が受賞されて、とてもうれしいなと感じているのですが、イグノーベル賞はもっと「それどこで活かすの??」っていう研究が選ばれると思っていました(もちろん、どんな研究でも活かす場所はあります!)。
今回の村上先生のグループの研究は実用性がすごく感じられて、それだけ歩きスマホが問題視されているのかな~と思ったりしました。
今回は以上になります。
参考文献
[参考文献1]
[参考文献2]
[村上先生のホームページ]
今回の研究の動画も「ギャラリー」にあります。